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デイサービス長老大学のブログ

高齢者が若者を支える。高齢者と共に未来を創る。逆支援型デイサービス 長老大学 のブログです。

参考書紹介(1)『治さなくてよい認知症』 FAQ 長老大学で認知症は治りますか? へのお答え

こんにちは。
デイサービス長老大学 代表の澤本洋介(@sawamoto482)です。

 

治さなくてよい認知症

認知症の方のいないデイサービス?

長老大学では、見学やお試し利用に来られた方から「こちらのデイには認知症の方はいらっしゃらないですね」と言われることがあります。
85歳以上の方の2人に1人が認知症の時代ですので、もちろんそんなことはありません。認知症の方も少なからずおられます。
見学の方がそうおっしゃるのは、長老大学では認知症の方も認知症と見えないということなのかもしれません。

では、長老大学の介護には認知症を改善する効果があるということでしょうか?

今日は私達がとても良くいただく「長老大学の聞き書き介護に認知症の改善効果はありますか?」というご質問へのお答えを書きたいと思います。

認知症が改善するかどうかは、わかりません

私達は「わかりません」とお答えしています。
聞き手の方のイメージしている認知症の改善効果が、例えば長谷川式スケールなどで評価される認知機能の改善ということであれば、正直なんとも言えません。
改善していそうな方もおられれば、加齢の影響もありますし、進行していそうな方もおられます。(あえて調査はしていません。)

ですが、聞き書き介護により「認知症の方ご本人ではなく、周囲の見方が変わり、周囲との関係性が変わることがあれば、周辺症状が改善する可能性はあるだろうと思っています。」とお答えしています。

中核症状と周辺症状

やや専門的な話になりますが、認知症の症状は中核症状周辺症状との2つに分けられると考えられています。

脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれるものです。これらの中核症状のため周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。これらを周辺症状と呼ぶことがあります。

中核症状とは、認知症の方皆さんに共通して見られる症状です。
記憶障害や見当識障害(場所や時間がわからない)などがそれにあたります。

周辺症状とは、暴力や徘徊、被害妄想、不潔行為、鬱症状など様々です。
こちらは、お一人お一人、症状の現れ方が異なります。
最近では行動・心理症状(BPSD)と表現することも増えてきました。
ご家族にとって、より大きな介護負担となるのは周辺症状である場合が多いです。

長老大学の基本テキスト『治さなくて良い認知症』のご紹介

長老大学では、上田諭さんの『治さなくてよい認知症』を認知症ケアの基本テキストとしています。

治さなくてよい認知症

治さなくてよい認知症

 

本書では、介護の大きな負担となる周辺症状は、ご本人の自尊心が傷つき、周囲との対人関係などの悪化によって引き起こされるという症候学的視点が解説されています。

症候学的視点とは「認知症は自己肯定感(自尊心)が傷つき、これまでの対人関係(社会的関係)が壊れる病であり、関係性悪化を背景とした精神的反応としてBPSDが生まれる」という見方である

認知症(アルツハイマー病)とは、原因不明で脳の神経細胞が脱落し脳機能が低下する病気ですが、それは病気の一側面でしかありません。もう一つの重要な側面は、自信がなくなり、自尊心が傷つき、周囲との交流が少なくなってしまい、孤独感や疎外感を感じるという精神的な側面です。これは病気ではなく、むしろ正常な心の反応というべきものです。

この考え方は、捉えようによっては「周辺症状の発生には、一部には、家族の責任もある」という、ご家族にとって受け入れがたいものかもしれません。

しかし、逆に言えば、「ご家族や周囲の関わり方によって、困っていた周辺症状が改善する可能性もある」とも言えます。

診察で、その認知症の人の表情が消える瞬間がある。曇るとか悲しげになるというのではない。凍りつくでもない、まさに消えるように見える。それは、一緒に受診にきた家族や介護者が、本人についての不満や問題点を医師に話すときである。本人の心情を考えて遠慮がちに話す人もいれば、本人などいないかのように露骨に悪口や不平を言い募る人もいる(後述するように、これは制止する必要がある)。その瞬間、多くの場合、本人の顔から表情というものがなくなるのだ。

私達も、この「認知症の方の表情が消える瞬間」を何度も見てきました。
周辺症状が「正常な心の反応」から引き起こされるという症候学的視点を、現場での実感として納得しています。

 

もちろん、ご家族の苦しさや辛さも非常に大きいです。

本人の心情に即した介護は、家族のみで行おうとすると密着度が高くなりすぎ、長時間の介護に疲労も強くなり、本人も介護者に依存的になりやすい。密着した介護にならないためにも、具体的には介護保険を使った公的サービスの導入を積極的に勧める。とくに効果が期待できるのはデイサービスである。

長老大学も、ご家族に寄り添い、ご家族のお役に立てるようなデイサービスでありたいと考えています。

「聞き書き介護」による自尊心の回復

デイサービス長老大学では「聞き書き介護」を行っています。
私達の知らなかったことを教えていただくことにより、ご利用者の皆様は自然と「先生役」となります。

介護現場で固定化されがちな「支援する側」と「支援される側」の関係性をひっくり返すべく、ご高齢のご利用者の皆さまに若い世代や地域を支えていただく活動(例:若者への人生相談など)にも取り組んでいます。

その際に、そのご利用者さんが認知症であるかどうかは関係がなく、私達も気にしていません。

見学やお試し利用に来られた方から「こちらのデイには認知症の方はいらっしゃらないですね」と言われる理由としては、このような活動が、ご利用者さんの自尊心・自己肯定感の回復につながり、張り合いを持って過ごしていただけているからかもしれません。

障害者福祉における社会モデル的な考え方を参考に

認知症ケアには、障害者福祉の「障害は社会の側にある・社会を変えよう」という社会モデル的な考え方がとても参考になると考えています。

認知症の周辺症状も、ご本人ではなく、周囲の側の見方が変わり関係性が変わることで改善することは少なくないと思います。

長老大学では、ご利用者さんから教わった貴重な学びをご家族にお伝えしたり、紙新聞やブログなどでご利用者さんの凄さや格好良さを発信することで、少しでも高齢者の皆様への関わり方が良い方向へ変わるきっかけになればと試行錯誤しています。


介護に関わる方だけでなく、多くの皆様に認知症や高齢者の皆様の暮らしについて考える機会を持っていただけたらと、Instagramもはじめてみました。(ご利用者さんの写真の使用については書面にてご同意をいただいています。)

少しでも気になった方は、ぜひフォローしてみてください。

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