デイサービス長老大学のブログ

高齢者が若者を支える。高齢者と共に未来を創る。逆支援型デイサービス 長老大学 のブログです。

過疎地域における「地域包括ケアシステム」について(再掲)

介護報酬改定に関するセミナーに行ってきました。
今回の報酬改定からは、国が推進している「地域包括ケアシステム」の姿がよく見えてくると感じました。
※この記事は、Tumblrで私が書いていた澤本洋介のblog(2015/2/27)の記事に加筆修正し転載したものです。

重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。
厚生労働省 地域包括ケアの実現に向けて

今回の介護報酬改定からは、地域包括ケアシステムとは「部門間の連携の強化」というよりも、さらに踏み込んだ「ケア付きコミュニティの構築」という概念で捉えたほうが良さそうです。

例えば、介護事業では今まで”施設ごと”に定められていた、要介護者○名に対し介護士○名、看護師○名という配置を、”地域ごと”にも考え直すということ。
具体的には、本山町全体の要介護者の人口が○名なので、介護士は○名、看護師は○名が必要と考え、それらの人員が効率的に動ける施設の配置や連携を考えなおすということ。

「社会保障費の増大を抑えながら、ケアのレベルをいかに維持するか?」

この無理難題に対する国の回答が「地域包括ケアシステム」なのだと、私は受け止めました。

今回の報酬改定では、私達のような小規模事業者の単独施設には非常に厳しい減収となりました。これは「小規模事業所の乱立は人員配置的に非効率で望ましくない」という考え方が反映されたものなのだろうと思います。
逆に、専門職の兼務の範囲の広がりからは、スタッフを柔軟に移動させて効率的に勤務させることのできる中規模以上の事業所に有利なものとなっています。
セミナーでの講師の方は、今後介護業界のM&Aが一気に進むのではないかと予想していました。廃業も増えるでしょう。
デイサービス長老大学にも買収の話が持ちかけられる日が来るかもしれません。

単純に言ってしまえば、社会保障費の増大を抑えるためには、「少ない人員で効率よく回していかざるを得ない」ということだと思います。

しかし、人を増やさずにケアのレベルを維持することが可能なのでしょうか?

そこで国が進めている対策は、介護福祉士制度の改正やキャリア段位制度の導入などを通じた介護職の専門性の向上です。
今回の報酬改定では、より専門性の高い資格や認定を持つスタッフの割合が高い事業所ほど、多くの報酬を得られるようになっています。
セミナー講師の方は、今後、有資格者の取り合いが激化するだろうと予想していました。
専門性の高いスタッフがいる事業所には多くの介護報酬が入り、それだけ高い給与で雇用することができるということだと思います。
介護の世界は低賃金で未来が無いという現状を変え、キャリアアップの道筋を分かりやすく、専門性を高めるほどに給与も上がっていく仕組みを目指しているのだと思います。

話を整理すると、
①地域全体で適正な専門職の配置を定め
②それぞれの専門職が地域内で効率的に動ける施設の配置と連携をつくり
③人員の不足については介護職員の「専門性の強化」で対応する
(専門性の高い介護職員にはそれに見合う給与が支払われる)

ということだと思います。

たしかに、このモデルは、首都圏をはじめとする日本の多くの地域にとっては、ベストというか、この道しかないのかもしれないと考えています。

ですが、四国の山間部のような過疎地域にとっては合わないだろうと思います。
なぜなら地域の抱えている課題が都市部とは大きく異なるからです。

私の暮らす嶺北地域の高齢化事情は、東京の数十年先を進んでいます。
国は2025年の中重度要介護者の急増への対応として地域包括ケアシステムのモデルを考えていますが、嶺北地域では高齢者の人口増大はすでにピークを迎え、今後は横ばいから緩やかに減少すると予想されています。
嶺北での緊迫の課題は介護に従事できる若い世代の急激な減少です。

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私は、そうした状況の中での「専門性の強化」は筋が悪いと考えています。
人口が少なく専門職同士での競争も少ない地域では、資格要件等で専門性を高めるメリットよりも、少ない人口の中から、介護に関わる人をさらに減らしてしまうデメリットの方が大きくなるだろうと思うからです。

厚生労働省も、地域ごとの課題の違いは当然重視していて、だからこそトップページに

地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。
厚生労働省 地域包括ケアの実現に向けて

と、わざわざ赤い文字で強調しているのでしょう。

私は、そもそも「専門職」という働き方は、ある程度人口の集積した都市部に適したスタイルだと思っています。

人口の少ない田舎では、1人が多くの仕事を掛け持ちする働き方が求められる場面が多いです。
私自身も、指圧鍼灸院にケアマネ事業所に家庭教師にパソコン指導等々、複数の仕事をしています。

農村には古くから「百の仕事ができる人」を意味する「百姓」という生き方がありました。
最近でも、伊藤洋志氏の提唱する「ナリワイ」や、塩見直紀氏の提唱する「半農半X」など、「1人で複数の仕事を暮らし方」の豊かさと強さが見直されています。

専門技術というと、分かりやすい資格みたいなもの
と思われがちですが、
自分の価値観に基づいて、
必要な技術を手持ちの経験や特技をかき集めて組み合わせる、
自分に無ければ他人の力を借りる
という工夫の方が大事ですね。

なりわい継承メディア ビジネスバトン

私はこの考え方は過疎地域での介護やケアマネジメントに欠かせない視点だと思っています。

地方には介護だけでなく、教育・農林業・商工業にも多くの深刻な問題があります。
だからこそ、多様な人材が介護に関わり、介護の現場から学んだことを他の現場で活かしていくような相乗効果を生み出す仕組みづくりが大切だと考えています。

私達は今年の4月に、「高齢者が若者を支える。地域を支える。逆支援型デイサービス」をコンセプトとしたデイサービス長老大学をオープンしました。
デイサービス長老大学では、スタッフ採用にあたっては資格や専門性と同等に、異業種での活躍経験も重視しました。
元銀行員・元柔道家・現役のリバーガイド・町づくりの専門家を志す者と、多様でユニークなメンバーが集まってくれました。メンバーの共通点は、地域の高齢者のお話に本気で興味があることです。ウチの会社では副業も大歓迎です。

最後にもう一度、厚生労働省の地域包括ケアシステムトップページの言葉を引用します。

地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。
厚生労働省 地域包括ケアの実現に向けて

私達地方の介護事業者は、国から降りてくるモデルに漫然と従うのではなく、市町村や県と連携しながら地域に適したシステムを考えて提案して実施していく責任があるのだと感じています。

関係者の皆さん、地域の皆さん
一緒に考えましょう。